研究概要 |
線状DNA分子の分子生物学的解析のために,パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を用いた巨大DNAの解析と全塩基配列の決定とを基本的な解析手法とした.今回の解析には1999年7-8月にかけて長野県内の病院において日本で初めてのバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)による院内感染事例において分離されたVRE株(Enterococcus faecalis)のうちP8065株を使用した. 1.PFGEを用いたDNAの解析 P8065株をPFGEにより分離し,切出したゲルを直接,あるいは抽出・精製したDNAをSalI, SpeI, BlnI, XhoI, EcoRI, EcoRVで処理した.制限酵素によりDNA分子の合計サイズに違いが見られた.制限酵素未処理のDNAサイズは約32kbであった.また,SalI, SpeI, BlnI, XhoIについて2種類の制限酵素の組み合わせ処理によるDNAサイズの算出を行った.これらPFGEによるDNA解析の結果は,P8065株に約32kbの線状DNA分子が2種類存在することを示唆するものであった. SalI, SpeI, BlnI, XhoIについて制限酵素地図を作成した.P8065株は非常に似た線状DNA分子が2種類存在するということを示唆するものであった. 2.DNAのショットガンライブラリーの作成 精製DNAを超音波処理により断片化したDNAのうち,1.2-1.5kbおよび3-4kbのものをpUC18ベクターにクローニングし,ショットガンライブラリーを構築した. 3.塩基配列の決定 2.で作成したライブラリーから,それぞれ300および100クローンについて両末端から塩基配列を決定した.その結果,PFGEによるDNA解析の結果と同様にP8065株中には2種類の極めて類似のDNA分子が存在すると考えられた.
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