研究概要 |
多くの金属は必須元素として、生体における様々な代謝反応の補因子や蛋白質の構造維持に必要であることが知られているが、さらに近年ではシグナル伝達物質としての役割も報告されるなど、生命活動の維持に重要な役割を有しているが,その生体や細胞内での運搬、吸収、貯蔵、利用の分子メカニズムは一部を除いてほとんど解明されていない。そこで,本研究では金属代謝機構に関連する遺伝子を包括的に同定し,これらの遺伝子の機能の解明を目指し,以下の結果を得た。 鉄の存在量に応答した遺伝子発現変化をマイクロアレイによって観測した報告が複数存在するが,これらの報告を比較すると培養条件の違いが結果に大きく影響することが強く示唆された。したがって,まず目的とする金属をどの条件で培養するかが重要であると考えられた。そこで,出芽酵母のゲノムプロジェクトで作成された生育可能な全欠損株のなかから,既に金属代謝に重要な役割を持つことが知られているAft1(鉄代謝制御因子)とFet3(高親和性鉄トランスポーター複合体を構成する酸化酵素),Mac1(銅代謝制御因子)とCTR1(高親和性銅トランスポーター),Zap1(亜鉛代謝制御因子)とZrt1(高親和性亜鉛トランスポーター)の各欠損株を抽出し,それぞれの金属の欠乏に対する感受性の違いを検討し,より強い影響が観察される条件の検討を行った。これらの制御因子(Aft1,Mac1,Zap1)はすべて主に対応するトランスポーター(Fet3,CTR1,Zrt1)の発現制御を行うが,制御因子の欠損と細胞外からの金属のトランスポーターの欠損では制御因子の欠損のほうが欠乏に対してより強い感受性を示した。今後は全欠損株を用いてトランスポーター欠損株が感受性を示す条件で生育阻害の検討を行う。
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