プラスチックカラムチューブを用いて通常の二次元電気泳動以外の泳動、特に一次元目について等電点電気泳動以外の手法が可能か検討した。その結果、酢酸尿素電気泳動その他各種泳動法について対応可能であることが判明した。しかしながら、それら電気泳動自体の分離能にも起因するが、新しく応用した電気泳動法は等電点電気泳動に比べて分離能は劣っていた。そこで、プラスチックチューブ内で起きる電気浸透流やタンパク質の吸着にその一因があるのではないかと考えられた。チューブ内側をリン脂質膜によってコーディングしたものを用いて泳動を試みたが、若干のテーリングの減少などは見られたものの、際だった改善は認められなかった。一方で、非変性状態でタンパク質の分離を試みるという考え方を発展させ、非変性状態で二次元クロマトグラフィーによるタンパク質の分離を試みた。分離はイオン交換法とゲル濾過の組み合わせによって行ったが、ここで分離されたタンパク質は飛行時間型質量分析装置で確認することができた。しかし、従来の方法では一度、質量分析装置に供したものはさらなる解析、例えばトリプシン分解などができなかった。そこで、質量分析装置にアプライしたサンプルをターゲット上でトリプシン分解する方法について検討した。短時間のトリプシン分解については、温度管理と湿度の管理が重要であり、さらに一定の有機溶媒と非イオン性界面活性剤の添加が有効であることがわかった。このオンターゲットでタンパク質処理する方法は報告例が少なく、このためのターゲット上で各種処理を行うのに適した装置は開発されていなかったので、その装置を考案し、実用新案として登録した。また、処理方法についても論文として発表した。
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