研究概要 |
セリンアセチル転移酵素(SATase)はセリンとアセチルCoAからO-アセチルセリンを生合成する酵素であり、その活性がシステインによりフィードバック阻害を受けることなどから植物の硫黄同化、システイン生合成に重要な役割を果たしていると考えられる。ゲノム解析が終わったことによりシロイヌナズナには5つのSATaseアイソフォーム(Serat1;1,2;1,2;2,3;1,3;2)が存在することが明らかとなっている。しかしながらこれらアイソフォームの個々の役割については詳細な研究はなされていない。そこでこれらアイソフォーム遺伝子にT-DNAが挿入された挿入変異株を入手し、これら変異体について、遺伝子発現や代謝物蓄積量を解析した。その結果、それぞれの挿入変異株において、遺伝子発現や代謝物蓄積のパターンが異なったことから、シロイヌナズナに存在する5つのSATaseアイソフォームはそれぞれ異なった役割を果たしていることが明らかになった。さらにDNAチップを用いたトランスクリプトーム解析を行った。その結果、各SATaseアイソフォーム遺伝子をノックアウトしたことによる硫黄同化系関連遺伝子の発現に対する影響は少ないことが明らかになった。今後さらに詳細に結果を解析する予定である。さらにGC/MSを用いた代謝物のメタボローム解析の結果、Serat2;1をノックアウトした変異体が多くの代謝物蓄積量に対して最も影響をあたえていることが示唆された。今後、これらトランスクリプトーム解析の結果とメタボローム解析の結果を融合することにより、各SATaseアイソフォームの役割について、より詳細な解析が可能になると考えられる。
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