植物の硫黄同化・システイン生合成経路は、複数の酵素ステップからなり、各酵素ステップには複数のアイソザイムが関与している。モデル植物シロイヌナズナの場合、硫黄同化の最初のステップを触媒するATPスルフリラーゼ(ATPS)については4つ、種々の硫酸化代謝物の生合成における硫酸イオン供与体として利用される3'-ホスホアデノシン5'-ホスホ硫酸(PAPS)を生成するAPSキナーゼは4つ、また、セリンとアセチルCoAから、システインの前駆体となるO-アセチルセリン(OAS)を生成するセリンアセチル転移酵素(Serat)には5つ、硫化物イオンとOASからシステインを合成するシステイン合成酵素(Bsas)には9つのアイソフォームが存在している。我々はこれまでに、これら冬酵素アイソフォーム遺伝子にT-DNAが挿入されたノックアウト変異体の単離に成功し、遺伝子発現解析及び代組物分析を行うことにより、各アイソフォーム遺伝子のシステイン生合成系における異なった役割を明らかにしつつある。今回、冬Bsas遺伝子の役割を解析するために、各アイソフォームのT-DNA挿入ノックアウトシロイヌナズナについて、その活性や代謝物を網羅的に解析した。その結果、Bsas1のノックアウト体について最もシステイン合成酵素活性が減少し、システイン量も減少したことから、9つのBsasアイソフォームのなかで、Bsas1がシステイン生合成に最も関与しているアイソフォームであることが明らかとなった。またBsasのもう一つの反応であるβ-シアノアラニン合成に関しては、Bsas3のノックアウト体で最も活性が減少することから、Bsas3の関与が示唆された。
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