NOD1については以下の研究を行った。われわれはNOD1のリガンドがγ-D-グルタミルジアミノピメリン酸(iE-DAP)であることを見出していた。昨年度はiE-DAPのグルタミン酸残基のアミノ基をアシル化した種々の類縁体を合成し、iE-DAPの数百倍の活性を示す強力なアゴニストとしてテトラデカノイルiE-DAP(KF1B)を見出した。新たにペンタデカノイルおよびヘキサデカノイルiE-DAPを合成し、これらがKF1Bと同様の強力なアゴニストであることを見出した。これらの化合物を用いて、腸上皮細胞におけるNOD1の役割を解析したところ、リガンドの作用によりケモカインが誘導されるが、炎症性のサイトカインは誘導されないこと、抗体産生増強作用を示すことなど、腸上皮細胞の初期自然免疫反応におけるNOD1の役割を解明することができた。 新たにペプチドグリカン部分構造としてアラニルγ-D-グルタミルジアミノピメリン酸(A-iE-DAP)を合成し、このトリペプチドがiE-DAPよりも強い活性を示すことを見出した。この結果を基に、NOD1生体内での挙動やリガンドとの相互作用の解析のために、放射性標識体として^<14>C標識A-iE-DAPを合成した。また蛍光標識体の合成も行ったが、物性が変化したために現在のところアゴニスト活性を示す化合物は得られていないが、それらのアンタゴニスト作用が期待される。 NOD2についても、そのリガンドであるグルコサミニルムラミルジペプチドの蛍光標識体の合成に向けて、その前駆体の効率合成を行った。この前駆体は標識部位としてアミノ基を有しており、容易に標識基を導入することができる。
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