・ソ連の外交史料館では、主として1930年代に駐日全権代表を勤めたユレネフが残した外交日誌を分析した。東京で面会した政治家、外交官、知識人、新聞記者らとの会談内容が克明に記録されており、日本側の日記、回想録、書簡と照合、比較・検討することにより日ソ双方の考え方を立体的に考察することが可能となる。ただし、平成17年度にモスクワのロシア外務省公文書館で行った調査時に、次回訪問時の引渡しを約束して関連文献の複写を請求していたのだが、平成18年9月に同館を再訪したところ、文書館の勝手な方針変更(コピー請求枚数の事後的な制限、文書史料へのアクセス自体への制限等)のためコピーを得ることができず、本来の計画通りに研究を遂行できなかった。ロシアにおける外交分野に関する史料収集の困難さを改めて痛感した。これからの研究にも支障をきたす可能性があるため、この問題への対応をめぐって、ロシアの研究者とも連絡をとりながら対応策を検討中である。 ・戦後10年間の日ソ関係に関して、終戦記念日(日本及び朝鮮半島における8月15日とソ連、中国における9月3日)に焦点をあてた論考を執筆し、スターリンの対日政策の変化、彼の死後に訪れた変化について考察した。2007年8月に出版される予定である。 ・平成18年度は、9月に約1ヶ月間モスクワに滞在し、ロシア外務省外交史料館、ロシア連邦国家史料館、ロシア国立図書館等で史料収集にあたったが、上述した通り、外交史料館での史料収集は実り多いものとはいえなかった。一方で、ロシア連邦国家史料館では、迅速な対応のおかげで人民委員会議関連の多数の史料を閲覧、収集することができた。また、ロシア政治社会史史料館では政治局の対日・対極東政策に関する史料を収集し、現在も内容の分析を続行中である。 ・図書館では関連文書の複写をするとともに、ロシア滞在中にはスターリン時代を中心に、ソ連史に関連した文献を広く収集できた。
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