2004年度は夏休みにベトナムの少数民族地域で、民族分類に対する少数民族側の意見を直接聞き、国家がどう対処しようとしているのかについて現地調査を実施した。 今年対象としたのはサンチャイ族と言われる人たちで、サンチーとカオランという2サブグループからなるが、それぞれが強く別々の民族として昇格することを要求している。7月12-19日までホーチミン市で民族分類を改定するための調査を行っているベトナム人研究者らにインタビューし資料収集を行った。また調査の受入機関となる民族学院担当者に面会、8月の調査に関し細かい打ち合わせを行った。 8月12日に再度渡越し9月8日まで、サンチャイ族を対象にフィールド調査と文献資料収集を開始した。ハノイではジエン民族学院院長に民族分類改定作業の進捗状況についてインタビューし、ハノイ北西のタイグエン省(フールオン県フード村ファン第2集落(サンチー)、ドンヒー県ケーモー村ナールー集落(カオラン)など、続いてハノイ北東のバクザン省ソンドン県レヴィエン社(サンチー)、アンバー社(カオラン)、イェンディン社(カオラン)、ルックガン県キエンラオ社(サンチー)などを訪ね村人の意見を聞いた。その結果、少数民族側は特権や経済的利益を求めて分離を要求しているのみならず、言語や民族衣装、習慣等も異なり、感情的にも民族としてまとまれないと主張していることがわかった。ベトナムの研究書では言語以外は全く同じとされている。確かに同じ地域に混住しているが、集落レベルでは分離している場合が多く、同じ民族と認定されている基準が明確でない。2004年春に開かれた会議で、住民代表を各省から招いて意見を聞き多数決までとったというが、政府はこれをガス抜きにしてうやむやのまま決着するつもりのようだ。民族学者は政府と住民の板挟みになって苦悩しているようだった。他民族のサブグループの要求がどうなるのか引き続き調査を続けたい。
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