研究課題/領域番号 |
16652015
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研究機関 | 日本文理大学 |
研究代表者 |
太田 清子 日本文理大学, 工学部, 助教授 (70194157)
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研究分担者 |
赤星 哲也 日本文理大学, 工学部, 助教授 (50279395)
岡本 壽夫 日本文理大学, 工学部, 教授 (50037222)
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キーワード | ひらがな表記 / 音韻 / 音素 / 音節数 / 母音の構成 / 品詞 |
研究概要 |
西村本『おくのほそ道』の本文を中心に音韻の調査・分析をするための作業として、まず本文をひらがな表記に直し、さらに音素を表わし、単語ごとに、音節数・子音の構成・母音の構成・品詞・活用形等の項目を記入した表の作成およびそのための基準作りを行っている。たとえば、単語を1音節あるいは2音節に分割して単純化することでより明晰な分析ができると思われるが、そのためには連語・複合語および語の構成要素等の扱いも併せて、精確な分割の方法とわかりやすい表示のための基準の設定を行う必要がある。また、音節数については、用言の活用語尾も音節として数える場合、活用しない品詞の音節数と区別できる表示にするための基準も設けるべきである。今後、表作成の作業を芭蕉の他作品や芭蕉以外の作品においても進めながら、統一的な基準の設定をさらに詰めていきたい。なお、音素に代わるものとして音声記号での表記も検討しているが、江戸時代初期の発音の実態が必ずしも明瞭でないため、現段階では暫定的なものにならざるをえない。作業を進める中で出てきたのは、『おくのほそ道』と『源氏物語』との一部の比較によると、『おくのほそ道』は『源氏物語』の言語使用のありようから大幅に外れるものではなく、『源氏物語』の言語使用のありようと概ね同様の傾向を示しているということである。たとえば、母音の構成では、a母音とo母音ではじまるものが多いという点が共通している。ただし、u母音ではじまるものについては『おくのほそ道』の方が『源氏物語』よりも高い使用度を示すという相違点も見られる。また、品詞についても、各品詞の全体に占める割合は両者においてほぼ同じである。ただ、形容詞・助動詞の使用は『おくのほそ道』よりも『源氏物語』の方に目立ち、一方、『おくのほそ道』では『源氏物語』に比べて名詞の使用度が高いという点も見て取れる。
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