本年度は、地中海の作家たちの作品をとりあげて、彼らの作品のうちに見られる語りと母性の問題に検討を加えた。研究の対象としたのは主に、モロッコの作家タハール・ベン・ジェルーン、アブデルケビル・ハティビ、チュニジアの作家アブデルワハブ・メッデーブなどである.彼らの小説作品を中心に分析作業をするとともに、関連の文献を渉猟した。フランスにて、研究者や作家へのヒアリングを行うとともに、資料を収集した。また、11月にはメッデブの作品の舞台となっているヴェネチアを訪れ、作品の背景などを検討した。1月には、ベン・ジェルーンの作品『貧民救済院』の舞台であるナポリを訪れ、作品の背景などを検討した。フランス語圏の作家とイタリアとの関係も地中海の問題を検討する際に重要な要素となることが明らかになった。 これらの調査・研究の成果の一部は、以下の形で口頭発表された。 「モロッコのフランス語表現文学-対幻想の罠」筑波大学北アフリカ研究センター主催「交差するアジア・北アフリカ文化・科学技術研究」2005年3月16日、於国際交流基金 「フランコフォニー文学における翻訳の問題--ハティビを中心に」東京大学、駒場主催シンポジウム「翻訳の言語態」2005年3月23日、於東京大学
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