最終年度にあたる本年度は、前二年に引き続き、マグレブの作家およびマグレブ系作家、そしてカリブ海と関係のある作家の作品をとりあげて、彼らの作品のうちに見られる語りと母性の問題を考察した。 研究の対象としたのは主に、モロッコのアブデルケビール・ハティビ、マグレブ系2世作家ヤミナ・ベンギギ、カリブの作家マリーズ・コンデ、ラファエル・コンフィアン、フランス人だがカリブやマグレブと関係の深いル・クレジオなどである。彼らの小説作品を中心に分析作業をするとともに、関連の文献を渉猟した。 全体の大まかな結論としては、マグレブおよびカリブの作家において、個々の作家の資質によって差異はあるにしても、口承性は顕在的な文学的な指標として、母性は潜在的だが主導的な文学的要素として機能しており、それがこれらの地域にひとつの統一的な相貌を与えていることが確認できた。 本研究の成果は次ページに記した論考としてその一部を発表したほか、より包括的な形で著書として発表すべく、現在準備中である。 その他に関連した活動として以下のものを行った。 本橋哲也(東京経済大学)、星埜守之(東京大学)とともに主宰する「ポストコロニアル文学研究会」にて、コーディネータとして、マグレブ・カリブ海作家に関する研究発表会で発言(2006年4月29日/7月22日/10月22、2007年2月24日)。 2007年3月21日〜23日に東京日仏会館にて行われたシンポジウム『21世紀の知識人』の学術委員として、モロッコ、ハイチ、カリブの作家たちを招聘、モロッコの作家アブデルケビール・ハティビの講演の司会。
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