研究計画に従って、京都服飾文化研究財団、神戸ファッション美術館に保管されている17〜18世紀の衣裳、靴、装飾品などを実際に調査した。Cambridge History of Western TextilesやBritish Museum刊行のWorld Textiles等で、生地、染料、織りの技法について学んだ上で、ヘンズロウやアレンの記録に現れる‘damask'‘baudekin'‘cloth of gold'といった種類の生地を確認できたことは有意義であった。 服飾文化学会のセミナーでは、山梨県郡内地方の織物工場を見学した。植物から採った自然染料で生地を染める工程は洋の東西でほとんど変わらない。日本古来の草木染め、手織りの工程、技法を学ぶことで、ルネサンス当時の工程についでも理解できるようになった。 これらの成果をもとに、平成16年8月、日本家政学会(服飾史部門)で「1600年前後の英国演劇道化役の舞台衣裳」についての研究発表を行い、ヘンズロウ、アレンの作成したリストのうち、道化衣装類がどのような意匠であったのか、推測される形を提示した。また、平成17年3月、東京理科大学紀要(教養篇)第37号で、論文「道化の服はまだら?(1)」を発表した。 現在は、ヘンズロウ、アレンのリストに記載された舞台衣装類を形と色、生地、装飾まで含めて視覚化し、道化役と主役級の舞台上での姿を再現しようとする作業を進めており、平成17年5月、日本家政学会(服飾史部門)で「英国ルネサンス演劇の舞台衣裳デザインと生地の色、素材の分析」について研究発表を行う予定である。
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