平成17年度は、研究計画に基づき英国での調査・資料収集を行った。 Victoria & Albert Museumでは、実際に貴族が着用していた衣服、金銀糸入りダブレット、ベルベットのケープ、総刺繍入り女性ボディスの他、エリザベス朝で衣服の縁取り装飾に用いられた金銀絹レース等の装飾品を調査した。同館付属のTextile study Room(生地素材研究室)には古代からの織物遺品が納められており、15-17世紀を中心に調査に当たった。National Art Library、British Library、National Archives(公文書館)では、天然染料や手織り技術についての書籍、写本、エリザベス朝貴族の書簡や遺書等の関連資料を収集した。 その他、Hampton Court、Temple、Whitehall等、当時の劇団が出張公演を行った建物を訪れたことは、舞台と観客の配置や上演形態を考察する上で有益であった。また、National Gallery、National Portrait Gallery、Tate Gallery の絵画資料は、残存品の極めて少ない当時の衣裳について多くの手がかりを与えてくれた。 現在は上の研究成果を元に、国際学会での発表準備、論文執筆を進めている。 平成17年5月には日本家政学会で「英国ルネサンス演劇の舞台衣裳デザインと生地の色、素材の分析」について研究発表を行い、平成18年3月には、エリザベス朝演劇の道化役がどのような色柄、デザインの衣裳で舞台に登場したかについて、東京理科大学紀要(教養篇)第38号に論文「道化の服はまだら?(2)」を発表した。
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