研究概要 |
平成17年度は、前年度にイギリスにおいて収集した文献・資料の精読と分析を主に行った。ヨーク大学グレアム・パリー教授より研究に関する助言を受けながら、日本では未だ研究が十分にされていない17世紀イギリス作家と作品について特に王政復古期の宗教的、社会的エソスを読み取る試みを継続して行った。具体的には、ジョン・イーヴリンとサミュエル・ピープスの日記、そしてギルバート・バーネットによるロチェスター卿の死の床での告白を扱ったSome Passages of Life and Death of John, Earl of Rochester (1680)を研究対象とした。 また、この研究の新たな方向として、17世紀半ばに現れるようになった書籍巻末のブックリストに関しての調査を開始した。ブックリストは既刊あるいは新刊本の一種の広告として、書籍商がテクストの後ろに添付して製本したものであるが、その時代の書籍を取り巻く文化的背景、経済的、政治的背景までも含む貴重な資料である。リチャード・チズウェルというロンドン書籍商のブックリストについて平成17年11月12日英米文化学会例会において王制復古期の出版事情に関する研究発表を行った。 上記の研究から、これまでに日本の英文学研究の対象から外れていた多くの特に散文作品によって、王制復古期当時の文学の正確な評価が垣間見えてきた。また、王制復古期の文献が著者と読者、さらには書籍商の三者が相互に影響を及ぼしあって産出されたことが判明し、時代の思想的背景を大いに反映するものであると確信を持つことができた。今後は、王制復古期の社会変化を映し出すブックリストの調査を続行し、さらに詳細な分析を行ないたい。
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