本年度の研究は、主に中国での現地調査と資料収集の二つであった。 現地調査)平成16年8月15日〜平成16年8月29日 平成16年9月22日〜平成16年10月3日 の2回、中華人民共和国・北京市で現地調査を行い、関係者から聞き取り調査を行った。主な訪問先は、中国戯曲学院、北京戯曲学院、人民劇場、中国京劇院、梅蘭芳記念館、湖広会館劇場、前門梨園劇場、長安劇場などであり、それぞれで実際の舞台公演や内部上演を見学したほか、京劇や昆劇など伝統演劇の俳優、スタッフ、俳優養成学校の教師、京劇研究者など多数の関係者から聞き取り調査を行った。その結果、中国の舞台上演の現状と問題点について新しい知見を得た。例えば、某劇団の新作演目(以下、聞き取り調査の相手に迷惑が及ぶ可能性があるため、ここではなるべく固有名詞を伏せておく)は、全国の芸術祭で賞を取ることを第一の目的として作られ、ノミネートの条件である一定の上演回数を確保するため上演先の劇場の質を無視せざるを得ないこと。劇団と劇場のしがらみのせいで、実演者にとっては理想的でない劇場で公演しなければならぬ場合が多いこと。最近の観客は舞台の質よりも劇場の雰囲気(新築かどうか、トイレがきれいか、など)で選ぶ傾向があり、市場経済のなかで良心的な老舗劇場が次々に消えていること、等々、公刊された書籍や文書では得難い、つっこんだ意見を聞くことができた。 資料収集) 上記の現地調査の途中、および日本国内での調査研究にあたって、現地での聞き取り調査の結果を補強するための関連資料(書籍およびVCDなどの映像記録)を収集した。 本研究は三カ年の予定であり、平成16年度の研究成果は平成17年度のぶんと併せて、後日、まとめて発表する予定である。
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