研究概要 |
本研究の3年間のうち、本年度は情報収集及び予備的実態調査の年であった。3名とも国内における文献調査をおこなった後、海外調査において、まず、海外共同研究者との協力体制の確立をおこなった。宮本はケニア,フィリップスはナイジェリア,また亀井はカメルーンにおいて調査を実施した。 宮本は、海外共同研究者であるナイロビ大学Okombo博士を訪ね、ケニア手話協会の概要の聞き取り調査をおこない、マチャコス市にあるろう学校を訪ねて教育における手話の使用実態を調査した。さらに、文献において、自然言語としての手話の特徴を研究した。ケニアにおけるろう者教育は、政府レベルにおいてはカメルーンやナイジェリアより遅れており、それを補完する形で、宗教団体やNGOが活動している実態が明らかになった。今後は、手話の使用実態を詳細に記述し、言語学的側面からの分析をおこなう。 フィリップスは、ナイジェリア北部のジョス大学をベースに、手話に関する国全体での言語政策および、メディアでの取り扱いの実態を調査し、さらに、ジョス市およびカノ市周辺の手話による教育を行なっている学校を訪問した。北部ナイジェリアでは、少なくともメディアにおける手話の使用は日常的であり、ASLの影響が強く見られた。今後は、ビデオに録画してきた手話の分析をおこなう。 亀井は、カメルーン共和国のヤウンデほか4都市において、ろう者の手話言語と教育に関する現地調査を行った。北部カメルーンのろう教育と手話言語の概況が初めて明らかになり、この国の手話言語分布成立史の一端が解明された。また、現地のろう者団体主催のセミナーで招待講演を行い、学術交流の促進を図った。
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