東チベット地域の地名と地理、および言語分布に関する諸資料を主として文献調査により収集し、分析を行なった。 ■文献調査 前年度にひきつづき、甘孜(ガンヅェ)藏(チベット)族自治州および阿〓(アパ)藏(チベット)族羌(チアン)族自治州の各県ごとに編集された『地名録』を調査して漢語による音訳表記の地名と民族語の対応ならびにその意味についての基本的な記述資料を収集した。古書籍を扱う書店を通じ、『地名録』の重要な巻冊を入手することができたので、これまでに現地を踏査することのできたいくつかの県と幹線道路を取り上げて、関連する地名の解析に必要なデータの抽出作業を行った。 ■資料の分析 民国時代に作製された当該地域の地図を入手し、現在の地名との比較のもと、重要ないくつかの地点についてその漢字表記とチベット語との対応を調査した。また清朝時代に当該地域の言語について行われた調査記録である「西番訳語」と称される一連の資料の巻首に記載されている言語の分布地域の漢字表記の地名について、収集した『地名録』中のデータ、歴史的な地理資料ならびに地図資料を対照しつつ同定を試みたほか、言語分布の変化とその伝播ルートについて検討した。
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