『日本語話し言葉コーパス』のコアに付与されたX-JToBIラベルを分析した。X-JToBIラベルは6層から構成されるが、今回はそのうちトーン層とBI層のラベルの一部に注目した分析を実施した。 トーン層については、ラベルL%HL%によって表現される日本語の句末音調(上昇下降調)に存在する2種類の変種を分析した。 イントネーションの上昇下降が発話の最終音節内部で発生する通常の上昇下降調と、上昇下降が発話末の2音節(以上)にまたがる変種(PNLP)とに注目すると、両者のふるまいが正反対というほどに異なっていることが判明した。まず発話のスタイルないし自発性に関する印象評定値との関係を検討すると、PNLPは通常の上昇下降調よりもはるかにあらたまった印象を聞き手に与えることが明らかになった。また講演がどの程度あらかじめ準備されているか(どれだけ原稿に依存しているように聞こえるか)の印象評定値との関係を検討すると、PNLPは自発的な講演には生じにくく、反対に原稿に依存していると判断されることの多い講演には生じやすい傾向が明らかになった。 BI層については、2+bおよび2+bpのラベルについて分析をおこない、これらのラベルが自発性の低い、あらかじめ準備された講演に生じやすいことを明らかにした。 これらの分析結果はいずれも、話し言葉の口調として我々が知覚するものの背後に、その知覚を成立させる音韻的特徴が存在していることを示している。 一方、書き言葉の文末特徴との相関については、十分な分析を施すことができず、今後の課題となった。
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