研究課題/領域番号 |
16652033
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
DANIEL Long 首都大学東京, オープンユニバーシティ, 准教授 (00247884)
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研究分担者 |
中井 精一 富山大学, 人文学部, 助教授 (90303198)
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キーワード | 方言形成 / 八丈島の子方言 / 琉球方言 / 方言接触 / 言語接触 / 方言学 / 社会言語学 / 文化形成論 |
研究概要 |
本研究は、言語接触によって新たに生じた言語体系の形成過程を明らかにすることが目標であった。これを追究するため、人間の歴史が100年しかない南大東島の言語体系を対象にし、フィールド・ワークに基づいた理論的考察を行った。 2004年9月、ロングと中井が3人の大学院生と共に南大東島で現地調査を行った。琉球系と八丈系の両方において、老年層話者を対象に面接(録音)調査を行い、自然談話を収集と共に、かつてや現在の言語生活に関するデータを集めた。これ以外に、中高年層を対象に、八丈語残存状況、およびウチナーヤマトゥグチとの混合状況を明らかにするため、語彙・文法項目の調査票を用意し、それに基づいて、面接調査を行った。さらに、南大東小・中学校の校長や南大東村教育委員会の全面的協力を得て、小学校4〜6年生、および中学生の全員を対象に言語使用に関するアンケート調査を実施した。2005年8月にカナダで開かれた第12回「国際方言学方法論会議」の目の研究会に中井とロングが出席し、南大東島の独特な言語状況やその研究の意義に関する発表を行った。その後、プリンス・エドワード島大学の島嶼研究所の関係者と島嶼研究のあり方や問題点について会談した。さらに、米国東海岸の離島であるオークラコーク島を訪れ、島の博物館で関連資料を収集し、島ことばの言語文化に関する博物館の展示を視察した。 これまで、「歴史が浅くて、伝統的方言を持たない」という理由で南大東島の言語体系はあまり注目されなかったので、本萌芽研究は模索しながらの調査となった。我々はあえて、新しく誕生した言語体系の形成過程に注目し、南大東島でのフィールドワークにのぞんだ。そこで見た地域言語は、八丈島方言、沖縄各地の伝統方言、ウチナーヤマトゥグチ、全国共通語、さらに西日本共通語など多数の言語体系が複雑に入り混じっている「コイネ」言語であった。これから、この研究で得られた知識を発展させ、他地域における新生言語体系の形成過程を理論化していきたいと考えている。
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