本年度は、以下の1〜3の研究活動を行った。 1.基礎的研究 非漢字圏の初級学習者にとって、漢字がどのように認識され処理されるのかという点について、学習者の学習活動の観察、文献研究、認知科学関係の研究会への参加などを通して、考察を行った。とりわけ、まだ語彙力や文法力の低い入門期の学習者に対し、やみくもに漢字の読み方を教える従来の方法のもたらす問題点を指摘し、その前段階としての字形や意味の認識を重視した授業の必要性について、その具体的な実践例とともに、前原(2004)で報告した。 2.教材の開発 【「漢字読解タスク」の試作および試用】学習者の日常の生活場面において実際に必要となる「未知の漢字列の中から漢字の字形や意味を手がかりに情報を取る能力」の養成を目的としたタスク開発に着手した。本留学生センターの実際の漢字クラス(授業および定期試験)の中で試用し、学習者からのフィードバックを得た。その概要を前原(2005)で報告した。 【自習用教材の試作および試用】上記のタスク達成のためには、最小限の漢字についての知識(意味・読み方・用法についての知識など)の積み上げが不可欠であるが、これらへの習熟は個人差が大きいことから、学習者が各自のコンピュータ上で自習できる練習問題を作成、希望者にE-mailで配信した。その改訂版を、近日中に本センターのサイトで公開の予定である。 3.その他 本研究で開発する教材の効率的な実施や配信方法などを考える際の参考のために、E-learningについての現状やLMS(Learning Management System)についての情報収集を行った。
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