本研究は、「講義の内容がよく理解できない」という学部留学生たちの難題を解決するため、講義の理解を阻む要因がどこにあるのかを解明し、その成果を全学教育(学部1・2年生対象)の日本語授業の改善や、入学試験の実施方法の見直しへと結びつけることを目的としている。 今年度は昨年度に引き続き研究資料の収集を行い、データの充実を図るとともに、データの分析を進めた。収集した資料は、大学の講義4科目(理系2:文系2)の他、日本語学校の日本語授業4コマ分(大学入試直前の授業)、留学生センターで行っている上級留学生向けの専門授業4コマ分(医学・法学など)である。 分析は、主として(1)教師の発話の複雑さ、(2)語彙の種類、(3)談話展開の方法の3点から行っている。(1)については、発話内の語彙数や文節数といった量的な側面からの分析を、(2)については授業で用いられる語彙の難易度や種類といった質的な分析が中心である。また、(3)については、教師の発話に見られる言い直しや言い換えなど、聞き手の理解を促進すると言われる言語的な修正がどの程度の頻度で生じているのか、またその種類や特徴に違いはあるのかといった点に重きを置いて分析を行っている。 3年目を迎える平成18年度は、10月に香港中文大学で行われる日本語教育シンポジウムでの発表を目指し研究成果のまとめを行う一方、国内でも日本語教育機関の教員を対象にしたシンポジウムの開催を計画しており、日本語教育機関の連携を積極的に進めて行こうと考えている。
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