本研究では、学部・大学院への橋渡し教育を「専門教育課程で必要なスタディー・スキルの養成」という観点から捉え直し、学部の講義、日本語学校の授業、留学生センターで実施しているビジターズ・セッション(専門講義)の3種類の授業における教師の発話を録音して、語彙、統語、表現・談話の3つの領域からその言語学的な特徴と違いを明らかにすることを目指した。 今年度はこれまでに収集したデータの分析を行い、まず10月に香港中文大学で開催された「第7回国際日本研究・日本語教育シンポジウム:アジア太平洋地域における日本研究と日本語教育の変容と課題」で口頭発表を行った(現在Proceedingsに投稿中。研究成果報告書に転載)。 発表1:小山・清水・大神「大学講義への橋渡しを考える-教師の発話の分析を通して-」 発表2:大神「日本語学校の授業・大学の留学生向けの講義・大学の専門講義における文構造の分析-スタディー・スキル養成のための日本語プログラム開発に向けての基礎研究-」 また、本年2月10日には九州大学で「日本語教育国際シンポジウム:学部留学生の受け入れを考える-スタディー・スキルの養成を目指して」を開催し、国内外から各機関で日本語教育に携わる日本語教員を招き、学部留学生に対する日本語教育の問題を、受け入れ側と送り出し側双方に関わる共通の課題とし、互いの認識を深めた。(各参加者の報告内容は研究成果報告書に掲載) 大学の講義における教師の発話を分析した研究は既にいくつか報告されているが、本研究のおいては単なる言語的特徴の分析にとどまらず、留学生向けの専門授業の可能性という具体的な提言にまで踏む込むことができたことが大きな成果であった。
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