研究概要 |
研究目的(2年間) 本研究では、脆弱な言語システムを有する話者(第二言語学習者)の場合は、モニターへの依存性が高いというBorden(1979,1980)の仮説が正しいのかを、実証的研究より証明する。さまざまな聴覚フィードバックの手法を用いながら、外国語習得の臨界期を越えた外国語学習者を対象に,母語話者と比較しながら、どのように発話処理が阻害されるのかを検証する。 研究テーマ(2年間) (1)100ミリ秒、200ミリ秒、300ミリ秒という時間遅延の違いにより、外国語学習者の発話がどのような言語上の影響をうけるのか、 (2)聴覚的遅延フィードバックによる効果は、被験者の第一言語と外国語の間で差異が見られるのか、 (3)どのようなタイプのフィードバックが、発話に最も彰響を及ぼすのか、 (4)どのような言語上の要素が、発話に最も影響を及ぼすのか。 平成16年度の具体的な研究内容 平成16年度は、外国語産出のデータを分折するにあたり、ベースラインとして母語話者の産出データを収集・分析した。産出時間を音声ソフトにより分析し、更に、産出時に近赤外分光法による脳内の酸化ヘモグロビンと脱酸化ヘモグロビンの濃度変化を測定し、発話音声の変化した箇所との整合性を検討した。主な研究テーマは、次の通りであった。 (1)200ミリ秒の時間遅延の際に、2種類の母音長(短母音・長母音)を含む文章のどちらで、聴覚的遅延フィードバックによる影響が現れるか、 (2)200ミリ秒の時間遅延の際に2種類のアクセント(下降調・平板調)を含む文章のどちらで、聴覚的遅延フィードバックによる産出への影響が現れるか、 主な実験結果 ・200ミリ砂の音響的遅延フィードバックの場合、長母音の方が短母音と比べ、多くの酸素供給がされることが判明した。一方、酸素消費は、さほど変動が比較的少なかった。 ・自然フィードバックと比べ、遅延フィードバックでは、ブローカ領域で発話開始時点から数秒後に酸素供給が増加した。 ・ブローカ領域で、発話前の発話準備成分が検出された。これは、自然フィードバックでも生じた。この成分は、特に右半球において発話開始時点になって初めて酸素供給が増加することから確認された。 ・アクセントによる遅延フィードバックでは、下降調の方が平板調と比べ、酸素供給が増した。 今後の研究予定 以上の結果は、被験者数が少ない段階のものであり、人数を増やす必要がある。また、周波数変換フィードバックによる産出への影響度に関する詳細な分析を現在行っている。平成16年度で分析した母語話者の産出結果と比較するために、平成17年度は、外国語学習者を対象に音響的遅延フィードバックと周波数変換フィードバックの影響を検討する予定である。
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