まず、諸外国および関連分野における犯罪地図分析の動向を把握するために、文献を収集して整理した。とくに、本研究課題と関連の深い環境犯罪学や犯罪GIS分析の成果と課題についてレビューを行い、展望論文を投稿する準備を進めている。 犯罪の実態については、全国的な犯罪発生動向を把握するために、既存の統計を使って罪種別犯罪発生率の分布傾向を分析した。その結果、必ずしもすべての地域で一様に犯罪発生件数が増えているわけではなく、地域的差異があることが確認された。 よりミクロな犯罪発生動向とメディアによる犯罪報道との関連性を検討するために、東京都と京都府を対象地域にした分析を進めている。具体的には、主要な新聞の記事検索サービスを利用して、1990年代以降の新聞記事に掲載されている対象地域内で発生した事件を抽出し、日時・発生場所・罪名等を記録し、警察が発表した犯罪発生データとの対比を行っている。 これに加えて、最近増加しているインターネットを通じた犯罪情報の公開状況についても分析を行った。地域によっては、詳細な犯罪地図をホームページ上で公開しているケースもあり、住民の犯罪情報入手経路の一つとして、インターネットも役割にも注目必要があることがわかった。 一方、中谷は京都府警の犯罪発生データを入手し、疾病の空間分析で適用されてきた様々な空間分析手法を応用する準備を進めている。具体的には、犯罪の空間分析に関する技法とソフトウェア(CrimeStat2)を利用した犯罪分析技法をレビューした。また、京都府警犯罪情勢分析室と犯罪の空間分析に関して共同の研究会を開催して情報交換を行うとともに、ひったくりに関する犯罪GISデータを提供してもらい、その空間分布特性について検討を行っている。 現段階ではデータ整備の途中であるため、本格的な分析は17年度に行う予定である。なお、中谷はこれまで手がけてきた疾病地図のGIS分析について、関連分野の研究者と共同で著書『保健医療のためのGIS』を出版した。
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