本年度はこの萌芽研究の初年度であり、次年度以降のための準備と基礎固めを図ることに意を払った。そこで本年度は、第一に、エネルギー政策の二大目標(安定供給と環境保全)の憲法的根拠づけの試行、第二に、現行の実定エネルギー法の調査と分析、第三に外国、とりわけドイツのエネルギー法の分析と調査と行った。 エネルギー政策の二大目標の憲法的根拠づけという課題は、基礎理論からの検討を要するものであり、今後も地道な研究を必要とする仕事であるが、本年度はまず憲法の「公共の福祉」に関する公法学の現水準を再検討した。その成果は10月11日に北海道大学で行われた「日本公法学会第69回総会」において、「公共の福祉の概念」と題する研究報告に結実した。また、環境保全の憲法論については、環境基本法の考察と合わせて行い、その成果を「憲法と環境基本法」と題する論考にまとめて公表した。 現行エネルギー法については、とりわけRPS法(新エネルギー電気利用法)を対象に調査・分析を行った。まず、大阪大学大学院法学研究科の環境法を専攻する大学院生たちとRPS法の検討会を行い、法の現況の分析を行った。また、EUの再生可能エネルギー指令との比較検討を行った。RPS法の所管官庁である経済産業省から情報を入手するため、6月13日に早稲田大学で開かれた第8回環境法政策学会にて、RPS法に関する報告をされた経済産業省資源エネルギー庁の中島恵理氏と意見交換を行った。 ドイツのエネルギー法との比較研究のため、夏にベルリン・フンボルト大学とリューネブルク大学に調査に行き、関係者との意見交換および資料収集に努めた。その際、環境公法の専門家であるリューネブルク大学のヨアヒム・ザンデン教授の知遇を得、来年度からザンデン教授と共同で、新エネルギー法の日独比較研究を行うことを決めた。
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