平成16年の信託業法の改正に伴い、信託会社の受託可能財産をとして知的財産権が認められ、信託業の実施主体に対する参入規制等が緩和された。知的財産権の信託が可能となることによって、知的財産権を管理・運用するための選択肢が広がると考えられるが、実際にどのようなビジネスが生まれ、知的財産マネジメントにいかなる変革をもたらすのかということに関しては、いまだ想像の域をでておらず、綿密なニーズ調査・実態調査を行い、それに即して更なる制度設計の考察を行うことが必要である。 知的財産権の信託については、流動化を目的としたものと、管理を目的としたものの2つに分かれるが、信託業法・信託法の専門家との議論により、新たな知財ビジネスの可能性が高いのは管理型信託であることが明らかになった。本研究では、その中でも特に、(1)グループ企業内での知的財産権の集中管理と(2)大学技術移転機関(TLO)における信託機能の利用に焦点をあて、実際の改正までの経緯や、金融庁の審議会でまとめられた『信託業のあり方に関する中間報告書』を踏まえた上で、金融庁、経済産業省、関連する団体・企業等からのヒアリング調査を行った。現在、2年目に向けて、これまでの成果を整理し、さらに必要な事項をピックアップしている。 次年度はさらに、諸外国の取り組みや、各国における問題点を調査し、比較検討を行う。特に米国においては、知財戦略が全社戦略の中で重要な位置を占めるものであるとの認識の下に、知的財産権の集中管理を行っているケースが多数存在する。これらの取り組みに関して渡米調査を行い、また、これを可能にしている法制度、税制度等に関しての調査を行う。また同時に、各国のTLOで採用しているスキームと、実務上の問題点等について調査する。
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