1 論考「カール・レンナーの民族的自治論:『諸民族の自決権』を中心に」(『経済学史学会年報』第46号)において、オーストリア民族理論の代表的論者カール・レンナーの民族的自治構想の基本的論理を紹介・検討した。レンナーの民族的自治構想が、彼独自の国家観・法思想に立脚したものであり、この点で、オットー・バウアーと顕著な相違があることを明らかにした。また、レンナーの構想は、発表当時はその実現可能性という点で、弱点をもつ提案であったが、国民国家(民族国家)という枠組みを超えた諸民族の交流が盛んになった現代においてより大きな意義を持つものであるとして、注目を浴びていることを明らかにした。 2 カール・レンナーの主著"Das Selbstbestimmungsrecht der Nationen in besonderer Anwendung auf Oesterreich"の未訳部分を訳出し、本書の全訳を完成した。(『岡山大学経済学会雑誌』第35巻1号〜第3号) 3 ウィーンの「オーストリア労働運動史研究所」において文献調査をおこない、カール・レンナーの民族自治構想の変遷と旧オーストリア帝国の民族状況に関する資料を収集した。平成17年度も文献調査を継続するとともに、収集した資料の分析・検討を進める計画である。
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