本研究の目的は、政治システム、経済システム、経済パフォーマンスの関係を明らかにすることによって、どのような経済体制が望ましいかを考察することにある。平成16年度については、政治システムと経済システムをそれぞれデータ化してとらえ、それらによって示される経済体制の実際や推移をみること、及びそれらの関係を考察することを行った。 1.経済体制の実際や推移をみる分析 この分析では、世界各国の政治的自由や経済的自由のデータを利用し、経済体制の実態や推移の把握につとめた。(民主政治かつ計画経済)の国が減っていき、現在、(民主政治かつ市場経済)の国・(独裁政治かつ市場経済)の国・(独裁政治かつ計画経済)の国、の三つに世界の国々は分類されるようなっていること。この過程で、世界全体で見れば、民主化・市場化の方向で経済体制は移行しつつあり、最近は特に市場化に比重を置いた形でこの移行が進んでいること。そして、政治的自由度・経済的自由度の国間格差は解消に向かっており、経済体制の収斂が進みつつあること。こういったことが明らかになった。以前に言われた資本主義と社会主義の収斂とは違った意味での体制の収斂が進みつつある、と主張した。 2.政治システムと経済システムの関係を考察する分析 上記と同じ政治的自由と経済的自由のデータを用いて、両者の因果性を分析した。政治的自由が経済的自由の原因となっているのか、それとも、経済的自由が政治的自由の原因となっているのかを問うたのである。現在まで、得られている結果は次のようである。データをラフにながめるならば、政治的自由の増加の後に、経済的自由が増加することが多い。単純な手法を用いた実証分析も、政治的自由が経済的自由の原因となっていることを示している。しかし、個別効果や操作変数を考慮した、より精度の高い手法を用いた実証分析では、両者の因果性は観察されない。
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