本年度は、研究のフレームワークであるソーシャル・マネジメントの全体像と地域価値・市民価値を形成・創造するための方法論に焦点を当てた。 1980年代半ば以降形成されたNPMは、公共サービスの標準化を図ることによる執行部門の効率化を意図した。しかしながら、公共サービス分野で単純に標準化が可能な領域はあまり多くなく、英国・ニュージーランドなどの古典的なNPMはトップマネジメントや都市・地域マネジメントを重視するかたちで進化する。しかしながら、地域価値や市民価値を設定するためには、有効な方法論の開発が必要である。その代表的な手法が、トップマネジメントでは、都市・地域ビジョンを導出するための自治体SWOTであり、執行のマネジメントでは、市民価値を高めるための自治体CRMである。いずれも企業経営での経営手法であり、都市自治体への適用に当たっては、マネジメントの対象が行政を超えた行政区域全体をとすることなどから派生する所要の方法論上の修正を図る必要がある。 地域価値からみれば、ビジョン・政策目標に対するシェアード・アウトカムの議論であり、行政側では施策展開へとリンクさせる。市民価値からみれば、市民の生涯価値を高める観点での公共サービスの再構築へと発展する。これらの目標は数値で示されることが多いが、公共サービスの再構築のためには、個々の領域で市場生産への転換が望ましい。しかしながら、地域通貨などとの連携事例では、必ずしも厳密な市場価値への転換が必要とはされていない。次年度は、地域における循環モデルにCSRや地域通貨などを組み入れた検討を行うこととする。
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