本年度は、地域価値・市民価値を形成・創造にあわせた合意形成・計測、実現のためのフレームワークに焦点を当てた。 都市・地域マネジメントのゴールであるベンチマークの設定については、SWOT分析を中心とした戦略マネジメントを都市・自治体向けに修正した意思決定プロセスを明確化した。都市・自治体マネジメントでは、○○市という行政区域と○○市という行政組織・団体の二つのマネジメント・プロセスを融合する必要があり、前者については、参加・協働型の意思決定が前提となる。つまり、都市・地域のベンチマークの設定にあわせて、行政・NPO・コミュニティなどとの責任・役割分担とそれぞれの組織の目標の設定が必要になる。これは、福祉・教育などの地域サービスの個々の領域ごとに設定され、公共サービスの供給に反映されていく。このような都市・地域マネジメントの先駆例として「エコバジェット」があり、例えばハイデルベルク市などですでに活用されている。大気汚染であれば物量データベースで、市としての目標を決め、経済界・行政・地域などで市の目標に対する責任・役割分担からそれぞれの数量ベースでの目標値を決定する。定期的に現状を評価しながら、都市・地域としてのマネジメント・サイクルを実践している。同様のアプローチは、市民生活に密着した福祉・教育サービスでも適用可能である。公共サービスのカテゴリーごとに行政・NPO・コミュニティでのサービス供給のすがたを描き、公共サービスの受け手である市民の立場からサービスを組み替え、数量ベースで捉えることで、地域における公共サービス勘定が概念的には構築できることが明らかとなった。これは、デンハートらが主張するニュー・パブリック・サービスの実務的な発展であり、自治体CRMの実証的なモデルへと応用可能である。
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