本研究は、金融ビッグバンによる会計基準のグローバル化により、企業の公開する会計情報が、従来の過去指向的な客観性を重視した情報(取得原価に基づく測定・評価)から、将来指向的な有用性を重視する情報(将来キャシュ・フローの割引現在価値に基づく測定・評価)へとその性格を大きく変化させていることに着目し、このような会計情報の性格の変化によって、会計情報に求められる真実性の意味内容がどのように変化しているかを科学的に計測することを研究目的としている。 本年度は、本研究で予定している目標のうち、会計情報の真実性に関する相対性(以下、「相対性」と言う。)を規定する諸要因の確定と各要因による相対性への影響を計測するための測度の開発について研究調査を実施した。 相対性規定要因の確定については、会計情報は、会計事実が会計処理システムを通じて会計数値に描写された結果であるので、相対性に影響を与える要因を、(1)会計基準の内容、(2)会計基準の精度、(3)会計情報作成者による会計政策、(4)会計的判断・見積りの柔軟性、以上4つの範疇から分析し、当該諸要因を抽出した。 相対性規定要因に対する測度の開発については、相対性規定要因はさまざまな性質を有し、一律に捕捉することは困難であるため、現在引き続き慎重に検討を行っている段階にある。つまり、上記規定要因それぞれの性質に応じた測度を開発すべく、隣接諸科学(計量経済学、統計学、数学、心理学、認知科学など)における同種の研究についてレビューを行っている。
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