研究概要 |
本研究は、金融ビッグバンによる会計基準のグローバル化により、企業の公開する会計情報が、従来の過去指向的な客観性を重視した情報(取得原価に基づく測定・評価)から、将来指向的な有用性を重視する情報(将来キャシュ・フローの割引現在価値に基づく測定・評価)へとその性格を大きく変化させていることに着目し、このような会計情報の性格の変化によって、会計情報に求められる真実性の意味内容がどのように変化しているかを科学的に計測することを研究目的としている。 本年度は、前年度に引き続き、会計情報の真実性に関する相対性を規定する諸要因の確定と各要因による相対性への影響を計測するための測度の開発を行う目的で、国際会計基準との整合化をはかるために新たに設定された会計基準11種類について、その内容を詳細に分析した。相対性規定要因を確定するためには、会計情報は、会計事実が会計処理システムを通じて会計数値に描写された結果であるので、相対性に影響を与える要因を、(1)会計基準の内容、(2)会計基準の精度、(3)会計情報作成者による会計政策、(4)会計的判断・見積りの柔軟性、以上4つの範疇から分析する必要があり、上記の分析を行ったものである。 また、当初予定していた上場企業(100社程度)の過去10年間のデータによる相対性への影響の差別化についての検証に入る前に、会計情報の質的特性としての真実性の程度にも直接間接に影響を及ぼすと考えられる企業リスク情報の開示について、開示すべき企業リスク情報の内容と会計情報との関係性分析を行うべく、主要6力国の上場会社7,910社に対する質問票調査を実施し、718社(回答割合9.60%)から回答を得、引き続き分析作業を行っている。
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