本年度の研究成果は、以下の通りである。 1.社会政策・社会活動の「公共性(公共的価値)」に対する社会学的分析枠組みの構築 「公共性(公共的価値)」を認識・評価するための立脚点は、政治学では「国家」、経済学が「市場」であるとすると、社会学は「市民社会」であるといえる。すなわち、社会学は市民社会における公共性の構成過程を経験的かつ規範的に捉える必要があり、そのために市民社会に内在した実践的な調査分析を行う必要がある。本研究ではまず、このような視点に基づいた公共性の社会学的分析枠組みを理論的に整理した。またその研究成果は、学会報告(「公共社会学とは何か」平成17年日本社会学会大会)並びに学術論文("What is 'Solution to Social Dilemma'"『西日本社会学年報』3号、「『新しい公共性』と民主主義の自律の理念」『社会学年報』34号)において公表した。 2.社会政策・社会活動の「公共性(公共的価値)」に対する社会学的調査の実施 上記の視点と枠組みに基づいて、(1)環境問題および(2)地域福祉問題に関する社会調査を企画・実施した。すなわち、(1)地域自治体および地域住民の「ごみ減量活動」に関して、東北大学文学部生活環境研究会の協力をえて、水俣市(および仙台市・名古屋市)を対象としたアンケート調査およびヒアリング調査を実施した。(2)地域ボランティア団体の「地域福祉活動」に関して、厚木市の市民団体「ヒューマンネットワーク厚木」の協力をえて、当該団体のメンバーを対象としたアンケート調査およびヒアリング調査を実施した。これらの調査において、公共的活動に携わる市民の規範的な自律ないしエンパワーメントの過程を捉えるための調査枠組みと調査項目を試験的に適用した。今後調査結果の分析および追跡調査によって、この調査枠組みの妥当性をさらに詳細に検討していく予定である。
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