本研究の目的は、児童虐待における意思決定過程への家族参画の意義を明らかにし、その日本的展開モデルを提示することである。今年度は昨年度の成果を踏まえ、家族参画の意義を明らかにした。 児童虐待において専門職が中心となって意思決定を行う援助モデルを「パターナリズム・モデル」、当事者が中心となって意思決定を行う援助モデルを「当事者(家族)参画モデル」として捉えた。近年における欧米・オセアニア先進諸国における動向として「パターナリズム・モデル」から「当事者(家族)参画モデル」への転換があげられる。我が国では1990年代に「子ども虐待の発見」がなされて以降、10数年しか経っていない状況の中で、アセスメントや介入への関心が高まっているように思える。すなわちパターナリズム・モデルの構築過程にあるといえる。とくに近年虐待の通告件数の増加に伴う各関係機関の繁忙さから、時間をかけて当事者の参画を促すことが困難な状況にあり、そうしたことがパターナリズム・モデルを強化していると捉えることができる。 今後我が国ではパターナリズム・モデルが強化される一方で、そのモデルの問題点が顕在化することで、当事者参画モデルへの認識や移行が可能となるといえる。「参画モデル」の意義として当事者のストレングスの発見と、エンパワメントの促進をあげることができる。「パターナリズム・モデル」では当事者を援助の対象として捉え、問題ある当事者として捉える傾向がある。そうした捉え方が当事者を無力化し、自己否定感を強化する可能性がある。「参画モデル」については、欧米・オセアニア先進職国導入されているファミリーグループ・カンファレンスを参考に日本的展開を明らかにした。
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