研究概要 |
本研究では、近年発展してきた3次元MUDを国際理解教育のツールとして利用することの有効性を検討する。3次元MUD(Multi User Dungeon)とは、複数の参加者がコンピュータを介して現実の生活空間を模した立体的な疑似空間に入り込み、そこで他者と相互交流を行うものである。本研究では3次元MUDシステム「3D-IES」上で行う言葉を使わない国際交流のためのゲームを3種開発した.このゲームはSherif(1961)が異なる集団が互いに連携や理解を深めるために必要であると主張した相互依存的目標を持つ共通課題を含み、また今までの国際交流で問題となっていた言葉の壁を解決するために言葉を使わずに課題を解決できるものであった。2004年10月から11月に韓国と日本を同時に繋ぎ,両国の女子大学生各25名を対象にしてこれらのゲームによる国際交流を実践した.ゲーム実施後,参加者にはこれらのゲームが国際交流に有用かという観点から感想を記述することを求めた.本研究の実践から3次元MUDにおいて現時点の技術でも国際交流のためのゲームを作成でき,それを用いて国際交流を行うことが可能であることを示せた。さらに、このゲームが国際交流に有効かを実証的に検証するために日本人大学生と日本在住の韓国人留学生を対象に実験を行った。実験は(1)ゲームによる交流フェイズと(2)交流相手国および国民への印象測定フェイズの2段階で構成された。印象測定フェイズでは、潜在指標であるIAT(Implicit Association Test)を用いて、相手国への好意を測定した。参加者を無作為に実験群と統制群の2グループに分け、実験群は(1)交流フェイズの後に(2)印象測定フェイズ、統制群は(2)印象測定フェイズの後(1)交流フェイズ、の順で行い、ゲームにより相手国及び国民への印象が変化したかどうかを検討した。
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