研究概要 |
平成17年度は、定型発達群における互恵行動・公平行動発達過程に関してデータを収集し、(1)日本の児童・生徒における分配行動の発達過程を明らかにする、(2)分配行動の発達過程を広汎性発達障害(PDD)群と比較検討する、という二点を目的として研究を行った。具体的には、愛知県の小中学校の協力を得て、参加を承諾した小中学生56名を対象に、dictator game / ultimatum game / trust gameの3種類の課題を実施した。 1.定型発達群の分配行動発達過程について 先行研究結果(Harbaugh, Krause, Liday, & Vesterlund,2003)と比較して、本研究参加者は早い段階から一貫して平等志向が強いという特徴がみられた。また、発達に伴ってultimatum gameで平等に近いオファーがみられるようになった点は先行研究と共通していたが、dictator gameでの分配額にはばらつきが見られ、本研究参加者の方が平等オファー率が高かった。強い平等主義傾向に、日米の文化差が反映している可能性が考察された。 2.HFPDD群の分配行動発達過程について HFPDD群との比較では、以下の点が示された。定型発達群では、本研究でも先行研究でも、dictator gameでのオファー額にばらつきがみられた。しかしHFPDD群では、ultimatum gameで平等オファーが増えるとほぼ同時に、dictator gameでも同様に平等オファーを行うようになる傾向がみられた。すなわち、相手との関係の中で自己利益を最大化するという経済合理的な理解からではなく、平等規範の命題的理解に基づいて行動が選択されている可能性が指摘された。平成18年度は、今年度見出されたHFPDD群の特徴を土台として、心の理論獲得過程との関連を縦断的視点を導入しながら検討する予定である。
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