研究概要 |
研究代表者は、マウスのホームケージ内での社会的行動を数日にわたって、自動的に測定・解析するコンピュータ実験システムを初めて考案し、国際誌に報告した(Miyakawa et al., 2003,PNAS)。従来、マウスの社会的行動は、マウスにとって新奇な場面において、極めて短時間の間(通常、10分程度)に測定されていた。この場合、新奇環境自体へのマウスの探索欲求や情動的行動の程度が、混交要因として存在するため、マウスどうしがコンタクトしている時間やコンタクトの回数がマウスの社会的行動の傾向を反映しているかどうかを判断するのは困難であった。例えば、新奇環境自体への探索欲求が過度に亢進している場合、社会的行動の傾向には異常はなくても、コンタクト時間や回数に減少が見られてしまうかもしれない。研究代表者が考案・開発したシステムを用いると、ホームケージ内での社会的行動を数日にわたって継時的に測定できるため、新奇環境への反応の違いの影響を受けることがなく、より正確に社会的行動の傾向を測定できる。 16年度は、京都大学医学研究科H棟内の行動実験室にこのシステムをセットアップした。すべてのケージは、照明が完全にコントロールされたアイソレーターラック内に設置し、これらによる社会的行動・24時間活動量の測定を可能にすることに成功した。16ケージの同時記録・解析が可能となり、既に数系統の遺伝子改変マウスで予備的データの取得を行った。17年度は、複数の近交系マウスについて、各種の基礎的データを取得する予定である。
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