本年度は、データおよび画像処理技術の高度化およびパラダイム設計関連調査の2項目を実施した。(1)計測データおよび画像処理解析技術の高度化では、まず脳活動計測法の解像度の規定要因と限界について調査検討した。情報処理の解明という心理学および認知科学の目的では、時空間的な解像度を向上させる以外にも脳活動計測法に付加価値を見出し得ることが判明した。また、多次元情報の表示技術について、仮想現実感技術を参考に検討をすすめた。とくに、構造生物学分野などで多用される両眼立体視ディスプレイで発生する問題について調査検討した。画面内と奥行き方向で同質の表現を行うためには、陰影なども加えた自然な表示が必要であること、独立成分分析など統計的な信号処理技術の導入が必要であることが判明した。(2)パラダイム設計関連調査では、本手法に適した計測パラダイムを明らかにするため、心理学および認知科学における非侵襲脳活動計測の現状について情報収集を行った。日本心理学会第69回大会でシンポジウムを企画したほか、情報通信研究機構、北海道大学、第35回北米神経科学学会(Neuroscience2005 SfN 35th Annual Meeting)、Harvard大学およびStanford大学にて脳活動計測および信号画像処理関連情報を収集し、検討した。その結果、定量的な計算理論構築に寄与し得るデータが最も求められていること、データの統計的処理や可視化のためニューロインフォマティクス技術が必要であることが判明した。次年度には、以上の検討調査結果もふまえてガンマカメラを用いた脳計測技術の開発成果についてまとめたい。
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