本研究では、教育方法が大きく変わる幼稚園から小学校への学びをいかに繋げたらよいかを探るために、幼稚園年長児と小学校1年生を対象に、遊びを媒介としで「楽しみながら自発的に計算を学ぶ」学習法の開発を試みる。 本年度は、第一に、年長児が「自発的に」どのような計算を行うかの実態を明らかにするために、附属幼稚園の年長児10名を対象とし各対象児についで、集団での自由遊び場面を1ヶ月に1回程度ビデオ撮影した。その中から自発的に行われた計算場面を取り出し、計算の過程、幼児どうしの詳細な会話、遊びの状況等について分析を行った。 第二に、隣接する附属小学校の1年生(主に卒園生)が休み時間に幼稚園に遊びにくる機会を捉えて、小学生と幼児の間でどのような関わりがうまれるか、どのような内容の「数や計算」についての「教えあい」が生じるか、について観察を行った(一部についてはビデオ撮影をした)。 結果として、自由遊び場面での自発的な計算については、簡単な計算から複雑な計算まで含めて9事例が得られた。簡単なものは「2たす3は5だよ」等で、言語的表現だけで、その場の幼児全員がそれを理解し認めるものであった。複雑な計算は「二人の持っでいる折り紙をあわせると12枚になり、12枚を3人で同じだけ分けるには何枚ずつにすればよいか」というもので、このように複雑な場合は指(具体物)を使って計算し、指の動きで自分も確認しつつ、他の幼児に対しで説明を行った。小学生が幼児に教える場面では、お店やさんごっこをしている幼児の計算を助ける、幼児に頼まれでメニューに金額を書く、幼児の作ったお金のゼロが多すぎることの指摘、がみられた。
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