研究概要 |
行動チェックリストの質問項目内容を収集する目的で、現職教員を対象にして学校における子どもの気になる行動について調査をおこなった。収集した内容について専門研究者の意見を取り入れて内容的妥当性の検討をおこなった後に、最終的に120項目を質問項目内容として採用した。次に、小学校低学年を担任する教師を対象に120項目についてその行動が子どもにあるかどうか「ある」、「ない」の2件法で回答を求めた。教室にADHDあるいは広汎性発達障害(PDD群)と診断された子どもがいる場合にはその子どもを、いない場合にはランダムに選ばれた一人の行動を評価してもらった。さらに、ADHD-RSについても同様に評定を求め、その評価点からADHD群と健常児群を設定した。各項目で健常児群とADHD群間、健常児群とPDD群間で「ある」、「ない」と答えた割合に差があるかどうか検討したところ、すべての項目で0.1%水準の有意差が認められた。その程度を定量的にしらべるため、健常児群とADHD群間、健常児群とPDD群間およびADHD群とPDD群間でファイ係数を求めた。これらの組み合わせでファイ係数が少なくとも0.4以上の102項目を用いて、ADHD群とPDD群のデータを対象に階層的クラスター分析をおこなった結果、「注意」、「持続性」、「衝動性」および「柔軟性」の4つのカテゴリーに整理することができた。それぞれのカテゴリーと各項目間の点双列相関係数、およびα係数を求めて内的一貫性(信頼性)の検討をおこなった。それぞれのα係数は、0.849,0.864,0.900と0.823であり、ほぼ満足できるレベルにあった。カテゴリー間の相関係数を求めたところ、「注意」、「持続性」、「衝動性」については相互に関連性が高いことがわかったが、「柔軟性」は他の3つのカテゴリーから比較的独立していた。
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