研究概要 |
1.リー群が複素多様体に双正則変換として作用しているときに、各軌道がある全実部分多様体と交叉するかどうか、という観点から「可視的作用」という概念を提唱した(文献[1])。さらに、群作用の軌道を保つ反正則な変換を用いて「強可視的作用」という概念を導入した。また、(強)可視的な作用の種々の例を系統的に構成した。その一部は文献[2]の第5章で発表し、残りは論文を準備中である。 2.可視的作用の概念を用いて、GL(n)のテンソル積表現が無重複になる場合をすべて決定した[1]。特に、Stembridge(2001)が個別に分類した組合せ論的結果に対し、複素幾何的な観点を与えた。 3.複素多様体における可視的作用の無限小レベルでの特徴づけを与えた。これはGuillemin-Sternbergによるシンプレクティック幾何の無重複作用やPodesta-Thorbergssonによるリーマン幾何の極作用とも関係していることに気づき、その基礎的な性質を研究した。これは文献[2]の第4章で発表した。 4.正則離散系列表現に関するHua-Schmid-KostantのK-type公式を非コンパクトな対称対に関する分岐則に一般化し(文献[3,5])、可視的な作用との意味を明らかにした(文献[2])。 5.大阪市立大学、韓国で上記の結果について連続講義を行い、また、デンマークで成果発表を行った。 6.解析接続によって複素半群に無限次元表現を拡張するというGelfand-Gindikinプログラムの一環として、不定値直交群O(p,2)の最高ウェイト表現の解析接続の公式を得た(真野元氏との共同研究[4])。さらに表現の複素化と積分幾何を主テーマとして、京都大学数理解析研究所で、Working Seminar on Integral Geometryのセミナーを定期的に主催した。特に、Krotz教授には連続講演を依頼した。
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