研究概要 |
1.表現を既約に分解したときに、それぞれの既約成分の重複度が高々1である表現を無重複度表現という。無重複度表現については、GL(n)からGL(n-1)への制限、リーマン対称空間のPlancherel型定理(Cartan-Gelfand等)、代数幾何における球多様体(Brion等)、無重複空間(Kac),テータ対応(Howe)など、歴史的に多くの無重複度表現が知られており、それぞれに美しく深い研究が発展してきた。 当該研究では、これらの事例を包括するような幾何的な舞台を準備することを主目的として、複素多様体における「可視的な作用」という幾何的概念を導入した。さらに、典型的な事例に対して、対応する複素多様体への群作用が「可視的」であることを具体的に証明し、上記のアイディアが有効であることを例示した(論文[1])。 2.既知の事例にととまらず、新しい無重複度表現を系統的に生み出すことを目指し、複素多様体における「可視的な作用」の例をいくつか構成・発見した。現在、論文を執筆中である。 3.複素多様体における「可視的な作用」が、コンパクトなケーラー多様体の場合には、「リーマン多様体におけるpolar action」やGuillemin-Sternbergによる「シンプレクティック多様体におけるcoisotropic action」という既存の概念との関連があることを見出し、その関係を調べた(論文[1,2])。 4.東京大学の玉原セミナーハウスで3時間の連続講演、2005年度表現論シンポジウムで2時間の概説講演、金行教授70歳研究記念集会などで成果発表を行った。またその講義録の作成を開始した。
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