研究概要 |
今年度の研究内容は次の通りである。河村は1次元力学系の位相共役と確率密度関数の軌道の関係を研究した。テント写像と呼ばれる標準的なカオス写像の位相共役な写像の属について共役写像をつなぐ接続写像(conjugacy)の性質を調べた。この接続写像が一般化された微分係数が0か無限大のみの値しか取らないというカオス的な特徴を持っていることを発見した。この特異な性質を持つ写像の例は、「悪魔の階段といわれるカントール関数」に対比できる重要な関数であると確信する。また河村はカオス力学系研究にとって欠くことのできないウェヴレット研究の共同研究を米国の研究者(X.Dai)と行い、統括的役割を果たした。 佐藤はヤコビ直交関数系に関する関数空間上の作用素とハンケル変換上の作用素との関係について、その一般化を研究しフーリエ解析のカオス力学系の研究に寄与した。また、関数空間をLp空間を含む空間であるLorentz空間として、その上の作用素について研究し、更に、その結果を一般化した。 方は代数方程式のすべての根の任意の一部分を同時に数値的に求める反復法を開発し、その方法の局所的な3次収束性を示した。またDirichlet境界値をもつ移流拡散方程式の有限差分法の超収束性を示し、微分方程式の解の軌道の研究を通し、カオス力学系の研究に寄与した。 澤田は、通信や交通管制システム,行政サービスや医療システムなど複合的な技術体系の基盤として必須である情報システムについて利便性,信頼性および安全性を同時に達成することを追及した。すなわち、このような,相反する複数の要素を統合して各要素のバランスをうまくとりながら,システム全体の効用を向上させるという問題の数学的なモデル化を考察した.
|