研究概要 |
離散最適化問題は,生産計画,ロジスティクス,システム設計,ファイナンスなどの様々な応用分野で現れるが,最適解を効率的に求めることは多くの場合に困難である.本研究の目的は,研究代表者によって提唱された離散凸解析という理論体系を踏まえて,非線形離散関数の離散凸関数による近似の理論構築を目的とする.さらに,この離散凸近似理論を基にして,非線形目的関数に関する離散最適化問題という扱いにくい問題を,離散凸関数最小化という扱いやすい問題で繰り返し近似して解くという新たなアプローチを提案する.本年度は主として,既存研究・関連研究を調査するとともに,非線形な離散関数の離散凸関数による近似に関する理論構築を行った.具体的な内容は以下の通りである. ・連続最適化問題に対する凸近似手法を用いた解法(制約なし問題に対するニュートン法,制約つき問題に対するSQP法など)に関する文献を調べ,既存の解法の特徴について把握した. ・2次関数に対するL凸性,M凸性を考え,それらの性質をもつ関数の係数行列の構造を調べた.とくに,2次のL凸,M凸関数はその係数行列に対する組合せ的な性質により特徴づけられることを示した.また,それらの関数の共役性についても議論した. ・離散関数に対するヘッセ行列の概念を導入し,ヘッセ行列を用いたL凸関数およびM凸関数の特徴づけを与えた. ・上記の結果に基づき,2次のL凸,M凸関数を用いた凸近似手法を構築した.さらに,一般のL凸,M凸関数による最良凸近似について検討を行った. 来年度の課題として,L凸,M凸関数による最良凸近似手法を確立すること,およびそれらを求めるための効率的なアルゴリズムの構築が挙げられる.
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