研究概要 |
今年度は,非線形分散型方程式であるKorteweg-de Vries方程式に,時間ホワイトノイズを乗法的に付加すると,解の時間無限大での漸近挙動がどのように変化するかを研究した.非線形放物型方程式に対しては,時間ホワイトノイズ(すなわち,空間変数によらないホワイトノイズ)を乗法的に付け加えると,ゼロ解が安定化する現象は,2001年にCaraballo, Liu and Maoによって研究された.(常微分方程式に対しては,1978年にHaussmanによる関連した研究がある.)今回は,時間ホワイトノイズを乗法的に付加すると,解の空間変数に関する二乗積分ノルムが,ある意味で時間減衰することを証明した.非線形分散型方程式に対しては,従来加法性ノイズによる安定化現象に関する研究は多数行われてきたが,今回のように乗法性ホワイトノイズを付加し,ゼロ解の安定化現象を解析した結果はほとんど無かったと思われる.Caraballo, Liu and Maoの論文において用いられたリヤプノフ汎関数をKdV方程式に適用できるよう修正し,指数マルチンゲールに関するDoobの不等式を用いるのが証明のポイントである.また,この証明法は,修正KdV方程式のような非線形項を一般化したKdV方程式に対しても適用可能であるとともに,ソリトン解などの特別な解だけでなく一般解に対しても時間減衰を示した点が重要である. 今回は時間ホワイトノイズを扱ったが,時空間ホワイトノイズを乗法的に付加した場合の研究,及び乗法性ノイズと加法性ノイズの解に与える影響の相違についての研究は今後の課題であろう.
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