山口32mパラボラアンテナは8GHz電波望遠鏡に改造され、遠隔操作での観測が16年度から開始された。そして単一鏡としてメタノール・メーザ天体の探査・観測が行われるとともに、国内5機関の電波望遠鏡と連携したVLBI観測もスタートした。そこで、近い将来、各電波望遠鏡をインターネット光結合のリアルタイムVLBI観測システムに発展させる準備段階として、山口32m電波望遠鏡と理学部屋上の1.2mBSアンテナ(基線距離12km)をインターネット結合する研究を開始した。 16年度はその前段階として、観測データをPC-HDに記録して持ち寄り、PC上での相関処理を試み、フリンジを検出することに成功した。これは大学院修士課程の学生による特別研究「山口大学小型電波望遠鏡による6.7GHzメタノール・メーザVLBI実験」としてまとめられ、2005年3月の日本天文学会春季大会でポスター発表V36Cを行った。 具体的内容は、1)BSアンテナ用の6.7GHzヘリカル受信コイルの自作、2)借用のルビジウム原子時計によるRef信号の発生、3)メタノール・メーザ天体W3(OH)の追尾測定、4)PC上で実行するように相関処理プログラムを改造し、処理の実行、5)信号積算処理方式の工夫、6)フリンジ検出の成功(0.5秒積分、40秒積算により、S/N=6)、である。 今後、1)BSアンテナによる天体追尾の精度や信号系のS/Nの向上、2)2つのアンテナからの信号のインターネット結合処理、3)BSアンテナ2号機の稼働と3鏡によるVLBI観測、等が次年度の課題であり、比較的容易な地上観測機器とその技術の確立で電波天文観測の普及をめざす。
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