本研究は、宇宙空間での直接干渉型重力波検出器(FP-DECIGO)のための基礎実験であり、宇宙での動作環境に近い状態を地上で実現し、制御実験を行なうことが目的である。そこで、ファブリー・ペロー(FP)共振器を構成する2つの鏡が30cm程度の広い範囲を低周波数で動く状況を実現するために、リニアモータで構成された可動ステージを用いる。また、宇宙環境での精密計測に使用する安定なレーザー光源の開発もあわせて進める。 本研究で具体的に行った研究項目は、音響雑音や空気の揺らぎの影響を排除して実験を進めるための真空槽の設計と製作、リニアモータを用いた可動ステージの基礎研究と実機の製作、また、測距に用いる安定なレーザー光源の開発などである。 安定なレーザー光源の開発に関しては、宇宙空間でレーザー光を用いた精密計測を行なうためには、打ち上げ時の振動や経時変化による光学系のアラインメント変化に対して強い光源を用いる必要がある。そこで、本研究では、光ファイバーを用いた安定レーザー光源の開発を行なった。レーザー光源からの光は光ファイバーを通じて、光ファイバーで構成された腕の長さが非対称なマイケルソン干渉計に導かれる。これによって、この干渉計を基準として、レーザー光源の周波数が安定化される。本実験では、10-100mのいくつかの長さの干渉計を試みて光源を安定化することに成功し、その特性を評価した。また、強度雑音に関しても、光ファィバーに結合された強度変調器を用いて安定化した。これによって、安定化レーザーは光ファイバー光学系のみで構成されることになり、機械的な振動などに対してアラインメント変化が起こりにくいレーザー光源が開発されたといえる。 その一方で、アクチュエータの特性評価に関しては、市販のリニアモータの動作特性や振動状況の評価を行った。その結果、アクチュエータは良好に動作する一方で、そのまま重力波検出器に用いるには振動が大きすぎ、十分な防振を施す必要がある、という結果が得られた。
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