カーボン・ナノチューブを陽極芯線として用いた比例計数管の開発を立教大学と共同して行なっている。カーボン・ナノチューブを用いることにより、低電圧で動作する比例計数管や、画素の小さな撮像型比例計数管などの実現可能性がある。通常の比例計数管では不活性気体を放射線の吸収体として用いるが、本研究では、光電子の平均自由行程を強電場領域よりも小さくするために、液体アルゴンを用いることとした。前年度までに、冷却可能な放射線検出器函体を設計、製作し、信号処理系、冷却系、ガス供給系を構築した。今年度は、カーボン・ナノチューブ電極を高純度液体アルゴン中に漬け、電圧を印可し、60keVγ線を照射し、γ線イベントを生成させた。アノード信号にのる雑音を0.3mV(r.m.s.)程度まで低くするができ、60keVγ線のつくるなだれ無しの信号を取り出すことに成功し、スペクトラムを取得した。なだれ増幅が生じているかは、このスペクトラムをカーボン・ナノチューブ電極と対照電極とでそれぞれ取得し、比較することで調べられる。比較を、さまざまなパラメータの組み合わせのもとで行なうことにより、なだれ増幅の条件を絞り込む。
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