従来、多数の断層映像を撮影することで原子核乾板の3次元画像を取得していたが、本研究ではコヒーレント光の照明下で3次元情報をone-shotで撮影し、ホログラフィーの手法を用いコンピューター上で3次元映像を再生する。 本年はレーザー光源(He-Neレーザー、半導体レーザーλ=650nm)で照明した原子核乾板像(対象銀粒子径<1μm)を顕微鏡用対物レンズ(×100)でCCD撮像素子に結像して撮影する実験を行った。顕微鏡用対物レンズは無収差レンズとして近似できるため、フラウンホーファー回折が発生し焦点外れの回折像がリング状に観測できる。これを計算機によってデコンボリューションすることで、異なった結像面の情報が再生できる目論見であったが、実験結果は、原子核乾板中の銀粒子による回折像よりも途中の光路の乱れにより発生したスペックルパターンが支配的であり、不要な散乱光を無くす対策が極めて重要であることが判明した。 一方で、照明光のコヒーレント長が観測対象に対して、不必要に長いために有害なスペックルが発生したと考えられたため、部分コヒーレント照明を用いた実験を試みた。光源にHg-Xe放電管を用い干渉フィルターでλ=550nm付近の光を取り出し、コレクターレンズを用いて近似的に平行光にしたものを照明として使用した。その結果十分なコントラストではないものの、乳剤層中の厚み10数μmに渡って銀粒子回折像を観測することができた。これはレーザー光に比べてスペックルが平均化されるため、そのスケールが銀粒子の回折像と大きく異なり観測の邪魔になりにくくなったためと理解できる。奥行き方向に応じた銀粒子回折像が観測できたことは、より高輝度な光源を必要とするものの、照明光の平行度を上げかつ分光強度を狭帯域化することでコントラストを改善することが見込め、レーザー以外の照明での実現の可能性を示唆する。
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