1.電子スピンの状態を偏光の変化として光学的に検出するための高精度・高感度な検出器ポラリメーターを製作した。プローブ光を偏光ビームスプリッターで分けて2つのフォトダイオードで受け、それらの光電流の差をとることにより、10μrad以下のファラデー回転角を検出できるようになっている。磁気円偏光二色性を利用する場合は、1/4波長板を通し偏光面の回転に変換してファラデー回転と同様にして検出することができる。ポラリメーターにより電子スピンの磁化の大きさと向きに関する情報が得られる。 2.光学ディレイラインを組んでプローブ光を高精度で遅延させ、パソコンで制御された時間分解能100フェムト秒のスピン制御検出システムを製作した。光源は現有のフェムト秒パルスレーザーを使用した。また、ポンプ光の偏光の向きを光弾性変調器でスイッチし、ロックインアンプを用いた高感度な検出を行うことができるようにした。 3.室温のAl_2O_3結晶中Cr^<3+>イオン(ルビー)において、光誘起磁化を生成・検出する実験を行った。光学遷移の選択則を利用して円偏光のポンプ光で基底状態に磁化を生成し、直線偏光プローブの偏光の変化として検出した。ナノ秒領域の磁化の緩和と横磁場中におけるピコ秒領域の磁化の才差運動が観測された。 4.硫酸マンガン水溶液において、偏光を利用したポンプ-プローブ法を用いて、マンガンイオンの基底状態の光誘起磁化を生成し、ピコ秒領域の磁化の減衰を観測した。磁場を加えるとあるいは濃度を薄めると緩和時間が長くなることがわかった。この結果は、磁化の減衰がマンガンイオン間の磁気的双極子相互作用によるスピン交差緩和であることを示唆している。
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